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ヒト肺組織のパラフィン包埋サンプル3次元μCTによる3次元イメージング

実習で回った病院の抄読会のために全訳したので一応公開。分からない内容が多かったこと、google翻訳見ながらなのでクオリティの保証はない。

PLOS ONE: Three Dimensional Imaging of Paraffin Embedded Human Lung Tissue Samples by Micro-Computed Tomography

ライセンスはもとのページと同じくCreative Commons Attribution (CC BY) licenseとする。

概要

背景

肺組織の3次元微細構造を理解することで肺疾患の病態の本質が理解できる可能性がある。微小コンピュータ断層撮影(μCT)はこれまでのところ、造影剤で染色されたり、空気で膨張させて乾燥された固定サンプルの組織形態を解明するのに利用されてきた。3D微細構造イメージングを用いることで臨床データと関連付けのある大量のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを容易に後向き分析できるようになる。

方法

FFPEヒト肺組織(n=4)をニコン計測μCTスキャナーで撮影した。気道と血管のセグメンテーションは半自動で行った。μCT画像と光学顕微鏡画像両方で気道サイズ(平均肺胞隔壁間距離(Lm))を測定し検証した。

結果

μCTイメージングによって、FFPEサンプル(15mm x 7mm)中の組織とパラフィン間のコントラストが得られる。ボクセルサイズ6.7μmの解像度で半自動で気道、血管のセグメンテーション、定量的な解析が可能だった。CT画像は関心領域を探索するのにも利用でき、時間効率よく組織切片の標本を作成できた。μCTでのLm測定値は対照となった組織切片で測定したものと有意な差は見られなかった。

結論

日常的に作成されるFFPEサンプルをμCTによる非破壊イメージングで可視化し、評価する方法を実証できた。

導入

ヒトの肺の気道、血管、リンパ管はミクロでもマクロでも複雑に相互関係を持つ3Dネットワークを形成している。2.3mm以上のサイズのマクロ構造はマルチスライスCTを用いることでin vivoで可視化できる。喘息やCOPDでは軟骨の支持のない内径が2mm以下の細い気道が主な気道閉塞部位になっていると考えられている。そのため臨床で用いられるマルチスライスCTは疾患の影響のある直径2mm以下の気道レベルの解像度はない。微小構造を理解するためには拡大率、解像度を改善する必要がある。特に組織の特徴の3D再構成によって他の方法で不可能だった構造の変化や構成要素の位置関係を知ることが可能だったという報告がある。CTによる連続断片像の作成には大きな労力、標本作製、イメージング、再構成の専門技術が必要である。μCTスキャナーは1μm/ボクセル程度までの解像度があり、代替手法となる。μCTはこれまで空気で膨張させて固定したヒトあるいはマウスの肺標本を、細い気道や肺胞構造を物理的に標本断片を作成することなく撮影するのに用いられてきた。μCT画像に対して立体的解析を適用することで肺の形態を定量的に評価できる。 このように、CTは伝統的な組織学手法に対して微細構造の非破壊3Dのイメージングができるというアドバンテージがある。容積測定とμCTイメージングは組織標本中で関心のある構造を発見して診断やステージングするのに利用できる。さらに、体積の大きな組織においても興味のある領域を探索することで、全体を断片標本にする労力を減らし、ヘテロな組織から代表性のあるサンプリングが可能になる可能性がある。

材料および方法

ヒト肺組織サンプル

アメリカのサウサンプトン大学病院とカナダバンクーバーのセントパウル病院から2人ずつ書面でのインフォームドコンセントを得たうえで外科切除でヒト肺組織を得た。同意文書は両病院の研究倫理規制委員会で承認された研究計画に基づいている。サウサンプトン大学病院の倫理規則ははthe National Research Ethics Service Committee, South Central—Southampton A, number 08/H0502/32、セントパウル病院の倫理規則は University of British Columbia-Providence Health Care Research Institute Research Ethics Board, number H05-01150に基づいている。サウサンプトン大学病院では~1.5cm3の組織を中性ホルマリン液に48時間で固定してからパラフィンワックス(Shandon Hypercenter tissue processor (Fisher Scientific, Loughborough, UK))に包埋した。セントパウル病院ではホルマリンで膨張させてからシリンダー状の切断ツールを用いて標本化した。15mmx7mmにシリンダー状に切り取った組織は低融点のパラフィンをライカ組織プロセッサーを用いて注入した。

μCTイメージングプロトコル

FFPE肺標本は225kVX線源、高感度CsIシンチレータ、低エネルギーで性能が改善されたカーボンファイバー入力窓にカスタムされたニコン計量μCTスキャナーで撮影した。17KeV、19KeVに特徴的なピークがあり、平均18KeVのエネルギーを放出するモリブデン反射目標による50kVの電子加速電圧を利用した。ろ過は行っていない。150μAのビーム電流を選択し、8W以下のビームエネルギーにすることで目標へのダメージ、それに伴う焦点をぼかす必要性が生じないようにした。図1は標準NISTデータに基づいた軟部組織とパラフィンワックスの質量減衰係数を図示したものである。このように加速電圧、目標の原子番号という点で本撮像条件は利用可能な流量を減少させる一方で、それらは組織と標準パラフィン封入剤との間の減衰コントラスト(〜40keV以下)を取り出すことが分かる。〜6と12μmの間のボクセル解像度の3D再構成は、サンプルサイズごとに3142projection(0.11°刻みで360°回転)でニコンCT Pro 2.0のパッケージ内の標準フィルタバックプロジェクション(ラム・カオラックフィルタ)を使用して作成した。リングアーティファクトを除去するためにサンプルシャトリングを利用し、その際に、ストップ開始回転モードを露光時間1秒、1撮影当たり平均8〜16フレームで12時間撮影した。

http://journals.plos.org/plosone/article/figure/image?size=inline&id=info:doi/10.1371/journal.pone.0126230.g001

図1: 質量減衰係数に対するパラフィンワックス、軟部組織でのX線エネルギーの関係 パラフィンと組織の質量減衰径数の差の許容範囲を示している。標本の分厚さでは5mmまでである。

画像の可視化と解析

肺サンプルから一部分を選択し、ボリュームレンダリング画像を生成するために3次元可視化および分析パッケージVGStudioMax(ボリュームグラフィックス、ハイデルベルク、ドイツ)を使用した。半自動の技法は、肺組織中の気道、血管をセグメンテーションするために使用した。 簡潔に言うと、関心領域を血管や気道周辺で定義した後、自動3Dシード成長ツール(VGStudioMax)を用いて連続構造を描写した。 構造内のユーザ定義のシード点を使用し、グレー値がシードに設定した許容範囲内の連続した僕セルを、セグメント化されたボリュームに追加した。また、画像処理および解析ソフトウェアパッケージであるImageJ(バージョン1.48p)をFFPE肺サンプルのμCT画像から半自動で気道をトレースし、サイズを分析するのに使用した。μCTでの測定結果を検証するため、10枚のμCT画像と対照となる連続組織切片から2種類のエキスパートリーダーDMVTLH)によって平均線形切片値を測定した。 データはブランド - アルトマンプロットを用いて分析し、イントラ観察変動および画像モダリティとの間の差を決定した。

領域選択と組織

FFPE試料はまずμCT撮影してから、パラフィンブロック包埋して切片化した。切片を脱パラフィン化してMovatのペンタクロム染色を用いて染色した。さらに切片をドットスライド走査システム(オリンパス、サウスエンド・オンシー、英国)上で10倍の対物レンズを用いて画像化した。 得られた複数の画像を切片全体を構成するように合成した。μCT画像スタック内で一致するイメージ平面を、VG-Studioでサンプル中の3つ以上の構造的特徴を対応付けして同定、抽出した。さらに、ImageJのプラグイン(UnwarpJ elastic registration)を利用して標本中の構造的特徴を3つ以上対応付けして、組織画像とμCT画像を整列させ直接比較を可能にした。

結果

本論文では、記載したμCTイメージングプロトコルで、FFPEサンプル内の微細構造の可視化に必要な組織とパラフィン間のコントラスト差を得られることを示した。15mm x 7mmのFFPEサンプルで再構成された画像は、ボクセルサイズが6.9μmになる。図2によって示されるように、このμCTイメージングプロトコルによって気道と血管は壁の組成および分岐パターンに基づいて識別可能である。μCTスキャナの解像度では肺胞空域の微細構造を正確に描写することが可能になる。 μCTによって得られた画像が光学顕微鏡のものと一致することを確認するため、FFPEサンプルから撮影後に組織学切片を作成した。図2はMovatのペンタクロム染色切片と対応するμCT断面の画像の対応の一例を示している。画像を整列するために画像を登録した。

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図2: μCT画像とMovatのペンタクロム染色された組織切片の登録ベースの対応付け Aは、ドットスライド走査システム、10倍の対物レンズを組織切片を画像化したもの。初期画像は切片作成中の変形をUnwarpJ elastic registrationを用いて修正しμCT画像と一致させた。Bは最終画像、Cは対応するμCT画像。 A、B、Cの中の同じサブ領域の詳細は、D、E,Fに示されている、構造詳細はμCTと光学顕微鏡でよく似ている。

FFPEサンプルのμCTスキャンを得る一つの利点は、組織学標本を作製する前に、サンプル内の関心のある領域を選択するために3D情報を使用することができることだ。連続μCT画像とMovatのペンタクロム染料の対応付けを図3に例示した。連続切片から、呼吸細気管支に対応する終末細気管支を追うことができる。この選択技術を用いることで、サンプルを方向付けしなおすことができ、時間を消費して切片化したり、試料全体を染色したりすることなく関心のある領域を得ることができる。 組織学的染色および光学顕微鏡を追加して用いると、FFPEサンプルの組織組成を理解できる。パネルCはμCT断面から拡大した領域を示し、パネルGは対応する組織切片を倍率20倍で示している。この例ではMovatのペンタクロム染色はコラーゲン(黄色)、エラスチン繊維(黒)などの特定の組織を識別するために使用いて、これはμCT単独によっては不可能である。

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図3: 連続μCTとMovatのペンタクローム染色組織切片 連続μCT画像(A~D)と対応するMovat染色した組織切片(E~H)からμCTスキャナによって、組織とパラフィンとの間に画像解析のための十分なコントラストを得られることを示している。細胞レベルでの構造は、組織学的切片の染色で区別することができます。 顕微鏡によってC(ズーム画像)とG(20倍)の拡大で示したようにより高い分解能を達成することができる。 [TB=終末細気管支、RB=呼吸細気管支]。

FFPEサンプルのμCT画像によって、気道及び血管の半自動セグメンテーションを実行するのに十分なコントラストを得られることを図4におけるボリュームレンダリングで示した。構造が正しく識別されたことを確認するため、気管支を肺胞の開口部まで3Dで追跡した。このようなセグメンテーションによって形態学的分析つまり気道や血管の直径、枝の長さと分岐角度の測定が可能になる。 セグメンテーションの3Dレンダリングによって気道の直径や開存度の変化を見ることができる。

http://journals.plos.org/plosone/article/figure/image?size=inline&id=info:doi/10.1371/journal.pone.0126230.g004

図4: 小気道及び血管の3Dレンダリング

平均線切片(LM)は、一般に、肺胞気空間の大きさを評価するために使用され、拡大が疾患で発生するかどうかを決定するために使用することができる。 図5において、μCTスキャンの解像度が、そのような測定に十分であるか判断するためLmを測定した。Lmの値を検証するため、FFPEサンプル上で均等に分布する10枚のμCT画像において、対応する組織切片上のLmを算出した。直接比較するため、μCT画像と光学顕微鏡で倍率を揃えたため、光学顕微鏡の画像を2倍に拡大してμCT画像と比較した。二つの独立したリーダーで測定したLmをブランド・アルトマンプロットで示した。 図5Cおよび5Dは、それぞれμCTおよび組織学画像上で計測されたLmに有意な差がなかったことを示している。図5Eにおけるブランド・アルトマンプロットは、対応付けられたμCT画像および組織学画像から算出したLM測定値の間の密接な相関を示している。しかし、疾患を有する患者からのFFPEサンプル中のLmの評価にμCTを使用できるかどうかは今後試験する必要がある。

http://journals.plos.org/plosone/article/figure/image?size=inline&id=info:doi/10.1371/journal.pone.0126230.g005

図5: 平均線インターセプト測定の比較 (A) ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)コアからの代表的なマイクロCTのスライス (B) 画像登録を使用して一致させた同じ解像度(2倍の倍率)の組織学切片。10枚の組織切片に対応するμCTスライスをランダムに選択して平均線形切片値をすべての画像上で計測した。 ブランド・アルトマンプロットで共著TLHDMVの間の平均線インターセプト数の比較を示す。(C)はμCT、(D)は組織学標本 (E)は、2つの撮像モダリティ間の平均線切片の測定値の比較を示す。

考察

我々は、日常的に作成される造影剤を使用しないFFPEサンプルをμCTによって効果的に画像化出来ることを示した。特に、組織とパラフィンとの間に狭いX線減衰コントラストウィンドウが存在し、μCTイメージングのために利用することができることを確認した。肺の微細構造を可視化できる最適な画質を得るために、数時間程度の合理的な時間でスキャンできるの低流量、低kV設定のμCTプロトコルを記述した。このイメージングプロトコルによって、1)気道、血管系及び肺胞隔膜の視覚化、2)3Dレンダリングのための気道及び血管の半自動セグメント化、3)組織サンプル内の関心のある部位の選択、4)肺構造の測定などの複数画像ベースの分析が可能になる。μCTイメージングの利点として、3Dデータセットを取得することで、任意の方向で仮想的な切片を作成し、肺の複雑な構造をより良く理解することが可能になることが挙げられる。 二つの独立したリーダーを用いて、μCTと対照FFPEサンプルから得られた組織学画像のLmの測定値の間には有意な差が認められないことを確認した。 さらに、μCTイメージングは非破壊であるため、関心のある領域を選択し、他の技術を用いて利用することが可能になる。関心のある特定の構造を以前よりも適切な向きで切片化、標本化し、高倍率で正確かつ包括的に免疫組織化学的染色で分析することがが可能になる。 以前の研究では、μCTを用いて末期のCOPD患者において、複雑な遠位気道疾患を分析することの利点を示した。 本研究では、肺移植治療された重度のCOPD患者の非常に狭小化、閉塞した終末細気管支に注目した。しかし、μCTで十分なコントラストを得るために利用した四酸化オスミウム染色や臨界点乾燥を含む固定技術はアーカイブされたFFPEサンプルにさかのぼって適用することは不可能である。 これまでのμCT研究とは異なり、我々のFFPEサンプルの撮影プロトコルは、追加の染色や造影剤必要がないことを実証した。 伝統的な方法で作成されたFFPEサンプルを画像化することができるのは重要な進歩である。 この手法にはいくつかの利点があるが、処理によって複数アーティファクトが起こることも考慮する必要がある。 ホルマリン固定は、組織の収縮を誘発することが知られている。しかし、収縮は比較的均一であることが示されており、補正することができる。μCTによって可視化されたように、大きなサンプルのパラフィン包埋は大きなサンプル全体では一定ではないため、そのような場合には微細な気泡が生じ、薄い中隔壁の可視化が妨げられる。 6.7μmの分解能を達成するために、視野内に含まれるサンプルの幅は、直径が15ミリメートル以下である必要がある。μCT画像によって示されたように、 サンプルが視野よりも大きい場合に再構成アルゴリズムをデータセットに適用した場合、サンプル画像の中心とした強度勾配とハローアーチファクトを生成する。分析過程で再構成による問題領域を除外し、FFPEサンプルの中心領域にのみ焦点を当てたため、これらのアーティファクトは問題とはならなかった。また、これは、より小さなサンプルやより高度な再構成法の使用することで改善できる。FFPEサンプルの画像は、空気膨張、固定、乾燥された組織サンプルよりはるかにコントラストが低いことも認識している。しかし、私たちの評価プロトコルで提示した明らかな利点は、コントラスト低下のデメリットを上回る。 現在残っているμCTの課題はスキャナー設定、時間、撮影後の精度を高める処理、再現性、オペレータの作業負荷のバランスをとるために、ワークフローを最適化することだ。さらに、3Dデータセットの分析を進めるためには、高度な画像処理アルゴリズムを開発しなければならない。自動セグメンテーション、肺の気道と血管の3D形態計測は肺の解剖学のより包括的な理解を得られ、喘息およびCOPDなどの肺疾患で発生するリモデリングを定量化するのに役立つ可能性がある。無作為サンプリング手法に従って得られたFFPEサンプルは体積分率、表面積、数を立体的に計測することで、肺全体を特徴付けるのに利用できる。

結論

μCTスキャナーを使用することで、標準的なFFPEヒト肺組織を造影剤の追加使用なしに可視化することが可能であると実証した。